ゼラチンザイモグラフィーを用いて結合組織コラーゲン分解の原因酵素を検索し、筋肉、皮、血液に複数の活性を検出した。この結果は、これらのゼラチン分解活性が複数の酵素に起因する可能性を示唆していた。この活性バンドを示す酵素の中には、分子量20万以上の前駆体として存在すること、貯蔵中に容易に低分子化すること、広い組織分布を示すこと、ゼラチンやヘパリンに親和性を示すことなどから、細胞接着タンパク質であるフィブロネクチンである可能性が示唆されるものが存在した。 そこで、ヒラメ血漿からフィブロネクチンをゼラチンアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、そのゼラチナーゼ前駆体としての可能性を検討した。ヒラメ血漿から精製されたタンパク質は、抗ニワトリフィブロネクチン抗体と交叉すること、ヒラメ胚由来初代培養細胞やコイ上皮腫由来の株化細胞であるEPに対して強い細胞伸展活性を示すこと、及びこの細胞伸展活性はいわゆるRGDペプチドにより阻害されることから、フィブロネクチンであると同定された。 一方これまでの研究から、ヒラメを含む各種魚類組織中にはフィブロネクチン様タンパク質以外にもゼラチン分解活性を有する種々のプロテアーゼが存在することが明かとなってきた。そこで、キンギョ、マダイ、ブリについてザイモグラフィーを用いてゼラチン分解酵素の検索を行い、いずれの魚種にも共通して70kから120kのセリン型ゼラチナーゼが、また100k以外のメタロ型ゼラチナーゼが検出された。分子量は異なるがラットでもほぼ同様の活性が検出された。しかしその活性はいずれも魚類と比較して弱く、魚類組織においてコラーゲン代謝の盛んなことが示唆された。
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