研究概要 |
世界各地の湖沼ではアオコによる景観の悪化、悪臭、動物の死亡などが問題になっている。アオコの発生原因を究明するには、原因微生物の生態を解明する必要があるが、その前提として、これらの微生物の確実な種の識別が不可欠である。現在、アオコの識別は全く形態学的分類に依存しているので、環境の変化によって形態が変化する場合や形態形成が不十分な場合には、本法は全く無効である。 したがって、本研究ではMicrocystisの種に特異的に反応するモノクローナル抗体を作製し、形態学的分類ではなく、免疫学的手法を用いて本属を識別する方法の確立を目的とした。 モノクローナル抗体の作製には、本属微生物でマウスを免疫した後、脾臓細胞とミエローマ細胞を融合させ、ハイブリドーマを樹立した。これらのハイブリドーマを培養して得られた抗体の本微生物に対する反応性は間接蛍光抗体法を用いて判定した。 一連のハイブリドーマ樹立過程を経て、3種類のモノクローナル抗体を作製した。これらと5種38株のMicrocystisの株化細胞との反応性を検討した結果、16SrDNAの遺伝子解析から得られた結果に酷似した。したがって、本法において得られたグループは形態学的分類において定められた種よりも、より正当な分類である可能性が高い。 また,得られた抗体は対数増殖期および定常期の細胞に対しても反応し、0.5%〜5%グルタルアルデヒドで固定した細胞にも反応性が保持されていたので、保存サンプルの識別に十分有効であると考えられる。この反応はフローサイトメーターを用いてより迅速、かつ正確に計測できることも明らかになった。したがって、本法は、フィールドから得られたMicrocystisサンプルを正確にグル-ピングできる最良の方法であることが強く示唆された。 一方、Microcystisの生産する有害物質であるミクロシスチンに反応するモノクローナル抗体との反応性を検討した実験では、固定剤として5%ホルマリンでMicrocystisを固定し細胞膜を破壊すると、抗体が細胞内に入り良好な反応が見られることが明らかになった。
|