研究概要 |
肝細胞の接着・伸展および形態維持作用において著しい種特異性を示すテラピアおよびオオクチバス血漿フィブロネクチン(TpFNおよびLpFN)を尿素の直線濃度勾配溶出法を用いるゼラチンアフィニティークロマトグラフィーにより更に分離精製し,それぞれからコイType IおよびIIpFN(CpFN-IおよびII)と同様な分子形をした2種FNを得た。SDS-PAGE分析の結果,TpFN-Iは230kDaおよび215kDaの,LpFN-Iは230kDaの2本鎖から成るダイマーであり,両Type II pFNは共に約230kDaのモノマーであった。4種pFNは糖およびアミノ酸組成において顕著は差はなかった。同魚類のType IとIIのペプチドマップは類似しているが同一ではなかった。しかし,魚種間では明白な差違を示した。TpFN IおよびIIは,CpFNでは促進されないテラピア肝細胞の接着・伸展を同等に促進した。LpFN IおよびIIはオオクチバス肝細胞の接着・伸展を同等に促進するが,形態変化を完全には阻止しなかった。 魚類FNの細胞結合ドメインの同定法を確認するため,精製が容易なCpFN IおよびIIを試料とし,各種プロテアーゼ消化によるゼラチン,ヘパリンおよび細胞結合能を持つポリペプチドの経時変化から,各機能ドメイン配列の決定を試み,両FNの機能ドメインの配列を決定した。CpFN-Iの機能ドメイン配列はヒトpFNと基本的には類似していが,CpFN-IIはヘパリン結合ドメインにおいて特性を示した。また,両FNの細胞結合ドメインは強いサーモリシン処理により消失した。 魚類の肝細胞レセプターの分離同定法を検討するため,入手しやすいニジマスおよびウナギ肝臓を用いて検討した。2魚種の肝臓から細胞膜を調製し,CpFN-アフィニティーカラムにより結合成分を分離したところ,両肝細胞から45〜65kDaのポリペプチドを得た。これらペプチドは肝細胞のFNへの結合を阻害することから,FNレセプターと考えられ,この方法により魚類FNレセプターが分離できることを確認した。
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