研究概要 |
肝細胞と血漿フィブロネクチン(pFN)間の相互作用における種特異性の発現機構解明の一環としてプロテアーゼ消化によりコイType lpFN(CpFN-l)の立体構造を破壊したときのテラピア肝細胞に対する接着・伸展促進作用を検討した。その結果、CpFN-lに結合できないテラピア肝細胞はプロナーゼ消化CpFN-lに結合できた。また,その程度はCpFN-lを還元カルボキシメチル化した場合でもほとんど変化がなかった。これらの結果から,テラピア肝細胞とpFN肝細胞とpFN間の種特異性はpFNのレセプター認識配列周辺の立体構造の差異に起因していると推測され,その立体構造には分子内ジスルフィド結合は関与していないものと考えられた。 pFNの細胞結合ドメインの簡易同定法を検討し,プロテアーゼ消化フラグメントをSDS-PAGEで分離した後、電気的に転写したニトロセルロース膜上でウナギ肝細胞を培養し、分離されたフラグメントに接着した細胞を染色する方法が有効であることを確認した。この方法をCpFN-l,オオクチバスType lpFN,テラピアType lpFNおよび本年度精製法を確立したナマズType lpFNのサーモリシンフラグメントについ適用したところ,魚種により細胞結合フラグメントは顕著に異なることが明らかになった。 魚類の肝細胞FNレセプターの性質を検討するため,ニジマスおよびウサギ培養肝細胞の抽出液をSDS-PAGEおよび二次元電気泳動により分離し,抗インテグリンα4およびα5抗体反応性物質を,また,CpFN-l結合物質を抗CpFN-l抗体による免疫学的検出法により検出した。その結果,両肝細胞には2種抗体に反応し,CpFN-lに結合する約140,90および80kDaの成分があり,ウナギでは140kDa成分が,ニジマスでは90kDa成分が主成分であった。しかし,いずれの成分も魚種により等電点は異なっており,還元による分子量変化を示さなかった。
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