研究概要 |
今年度は,北海道における典型的な大規模畑作地帯であるA町の農業経営実態調査を利用して,畑作農家の経営構造データ・ファイルを作成した.これは,平成7年度で829戸の農家がいるが,その中から相互に隣接し土壌条件のほぼ同一なS地区の農家(157戸)を対象としたものである.データの項目は,労働力構成,作物別作付面積,農業機械の所有台数などである.これらのデータを5年置きに昭和35年までさかのぼってパソコンに入力した.昭和35年時点でS地区の農家と戸数は291戸である.このうち,151戸の農家が昭和35-平成2年間で営農を続けてきた純畑作農家で同一の農家である.この農家の平成7年との対応は来年度の作業であるが,この営農継続農家の分析が来年度の課題である. このデータによる経営規模の分析では,高度成長期に離農と離農跡地による規模拡大が進行したが,低成長期になるとそのペースは著しく鈍化した.この点は通説の確認である.しかし,農家の規模間格差はこの間注目すべき動向を示す.高度成長期に縮小傾向をみせていた規模間格差は,昭和50年以降拡大傾向に転じるようになる.つまり,平均経営規模の面では動きのなかった時期においても,規模間格差の拡大はすでに進行し始めており,その傾向は平成になっていよいよ顕著になったわけである.この背景には,一部の農家の農地賃貸借市場を通しての積極的な規模拡大がある.他方,後継者のいない農家は,すべてではないにしても規模縮小に向かっており,大規模畑作地帯に新たな構造変化が生じつつある.来年度はこの点をさらに検討する.
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