研究概要 |
1.伝統的農村社会の慣習が根強く残っている地域においても、女性農業者の地位は大きく改善されてきている。本年度の調査で確認された点は、「嫁」を養子とし、相続権を与えた事例が4,月30万円以上の給料を支給している事例が3、若夫婦に別棟(屋敷内分居)が2あった。養子と月給はいずれも稲作と花や施設園芸の専業的複合経営である。青色申告の専従者控除分を実際に月給として渡すケースは、急速に広まってきている。 2.後継者の就農を機に、定休日をきめ、給料制とする事例はかなり一般化している。近年になって、家族協定を推進し、一定の広まりをもつ市町村も出てきた。 3.高齢者の介護は依然として女性の大きな負担となっている。しかし、それを経験した50代後半の女性達がボランティア活動を組織し、「現職の嫁」さん達を支援したり、一人住いの高齢者の買物、昼夕食のサービス等に取り組みはじめている。 4.こうした新しい動きは、近年になって急速に展開している。現在の経営主世代が戦後の民主教育を受けた世代であること、「嫁不足」を経験するなかで、女性の地位に関心がむけられるようになったこと、農家経済が豊かになったこと等々がこうしたことを生み出している条件である。
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