本年度は広島県(中山間)及び山形県(規模拡大型稲作経営及び複合型稲作経営)への予備調査を合計3回実施し、文献資料収集、サンプリングを行った。この過程で次年度の調査事例対象地区を確定した。広島県への調査ではいわゆる村興し的な運動と農業を結びつけながら、経営発展を模索する動きがみられたが、そこには地域農業構造を一変させるような力強さを見いだすにはいたらなかった。引き続きこの点について調査を実施したい。今後はこの調査は主に経営に参画している女性について集中的に実施する予定である。 山形調査は経営調査を研究補助者とともに行い、個々の経営を訪問しての聞き取り調査、資料収集を実施した。こちらは地域農業全体の停滞にもかかわらず既存の農家経営内部での起業的園芸作が活発に行われており、集落を超えた女性のネットワークも構築されつつある。この地域では女性が農業生産力の重要な担い手として、かなり明確に位置づけられはじめている。従来の農家女性研究の多くが生活問題や家族問題を軸に行われていたが、あらためて、その不十分さを認識することができたと思う。これまでの調査では概況を把握することにつとめてきたが、今後は集会所で女性との集団懇談会と個別面接及びアンケートを実施し、このような動きを普遍化するために事象の抽象化・普遍化につとめることにする。
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