農協の農地関連事業における役割は集落レベルで組合員相互が取り結んでいる土地利用関係をより広い視点から補完するところにある。つまり農協指導事業として重視されてきた集落営農が存在しているところでは農協が直接、受委託の仲介斡旋に介入するよりも、集落組織を活用して組合員同士が自主的に土地利用の調整を行えるようなやり方が好ましいとされてきた。そして、集落の範囲で完結しない部分を農協の調整機能に委ねるということであった。ところが“JAあづみの"等で分析したように広域合併が展開している現在においては、市町村を超えた調整機能をになえる農地保有合理化法人もしくは農協間協同による広域組織化によって適正な土地利用調整を図っていくことが必要になっている。 また、高齢化、兼業化の進行のもとで農協も中核的担い手育成という構造調整機能を担わなければ、その存立自体も危うくなっている地域が増えている現状では、より積極的な農地流動化の方向づけを求められることになる。認定農業者の登録過程に農協が関与するケースが多くなっているが、その場合に農協としては、やみくもに特定組合員に、離農志向の組合員の農地を利用集積させればよいというのではなく、地域農業の将来像を現状に則してイメージし、地域内の農家の何割が自作形態を維持し、何割が作業委託の補完を必要とし、何割が経営委託に向かうのかを把握する作業が必要である。その上で認定農業者はおよそ何人で、その経営規模はどのくらいが適当と見通せるのかを明らかにし、その実現の方策として土地利用調整を農協主導で行うという関係者の間でのコンセンサスを得るという手順が必要である。
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