本研究の目的は (1)世界コメ貿易市場の特徴を他の主要畑作穀物の貿易市場との比較で、政策、技術、人口、所得分配、自然資源と気候の視点から明らかにする。 (2)日本のコメ輸入の、国際貿易米価への影響を通じてのアジア諸国の国内米価と低所得層の福祉への影響と国際貿易米価の変動性への影響を明らかにする。 (3)これら(1)、(2)の研究結果をもとに、アジアコメ市場との関係で日本のコメ政策のあり方を考察する、である。 平成8年度は、人口と所得分配の視点から米と穀物の需要、および世界の穀物の供給の将来性の研究を実施した。世界、特にアジアで、2020年にわたってピーク状態になる人口爆発と、中国を中心としてアジアで急速に伸びる一人当り所得とがコメと穀物、特に飼料穀物の需要を2020年にかけて爆発的に増加させるとの結論を得た。アジア及び世界の穀物の供給は技術、土地、水の制約から2020年ににかけて増加率が停滞するとの結論に達した。故に2020年には大幅な穀物の不足が予想されることが明らかになった。この不足に対して、日本、高所得諸国、および発展途上諸国がいかに対処するかが現在の政策問題である。
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