本研究は、市場経済体制への移行の目的で導入されてきた価格・貿易政策、財政政策民営化政策等と農業生産者保護政策が、市場経済への移行期にある東欧の国々の農業部門に対して環境面でどういう影響を与えているのかを検証し、持続可能な農業発展を図るという視点より環境への外部効果を内部化するための制度を考察し、広く移行期にある経済における環境政策面での政府の役割を明確化することを研究目的とした。 この研究により、以下のことが達成された。 1)急速に変容を遂げる移行期経済における経済改革と環境変化に関係する最近の内外の研究成果について再サーベイがおこなわれ、ハンガリー科学アカデミー土壌研究所のライカイ博士と共著でレビュー論文が作成された。そこでは、これまでのアプローチの特徴や限界、実際に存在するデータを使った分析の可能性について考察がなされている。 2)またハンガリー農業省がまとめてきた集計された農業生産データを、1965年分から1995年分まで入手し、データベース化した。さらに、農業関連の環境指標として、水質変化に関するデータも入手し、データベース化した。そしてこれらを使い分析がなされ、結果の一部は、環境経済・政策学会の全国大会で発表された。新しい経済環境が窒素肥料使用の低下をもたらし、それが地下水汚染の軽減をもたらしていることが、モデルを使い明示化された。 3)上の分析により明示化された環境への外部効果と現実に存在する経済・環境政策との乖離につき細部にわたり問題検討が行われており、持続可能な農業発展を図るために必要な制度・政策について論文の形にまとめられている。そこでは持続可能な農業発展にする環境に負荷をかけないような農業生産形態を確立するためには、経済的インセンティブを与えるような制度の導入が求められていることが考察されている。
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