本研究では、奈良盆地の在地農法である大和農法の特徴が、作りまわしと作りならしからなる田畑輪換農法であることを歴史的に明らかにした。そして戦後のトマト・イチゴなどの固定式の施設園芸の展開によって、田畑輪換奉納が衰退していくのである。新食糧法のもとで、米と野菜を組み合わせた農法を考えるなら、地域におけう地場と旬をめざす田畑輪換農法の再生以外にはない。 そこで、単なる机上の研究ではなく、農家などと具体的な方策を模索し実践したのが、本研究の実績といえる。大和郡山市の若い農業後継者たち、JA、COOP、普及センターなどが集まって、「やまと農談会」を月1回開催してきた。97年3月現在で41回を数える。さらには生産者と消費者が直接つながるために、「やまと農業ネットワーク」を作り、会員は現在百数十名までになった。 現時点で特に問題と思われるのは、あたり前であるが販売ルートをいかに確立するか。消費者との直接取引である産直では、点にならざるをえず地域的な広がりに限界がある。流通業者の仲立ちは、農家が小商人化しないためにもやはり必要であろう。田畑輪換についていえば、露地の野菜生産では不安定たらざるをえないので、施設を固定式から移動式のものに改良する必要がある。 他にも問題は多々あろうが、とりわけ上記の二点を解決していけば、奈良盆地における田畑輪換農法の現代的再生は十分可能である。引き続き、農家たちととに歩んでいきたい。
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