農村高齢者が抱えている生活問題は、医療や福祉の観点あるいは農業生産力の観点からだけでは解けない。農村高齢者自身の立場にたって、経済的・社会的・身体的自律を総合的に可能とするような地域経済社会構造が必要なのではないか。このような問題意識にたって、実態調査を行ってきた。今後分析を急ぎ、さしあたり平成9年度の地域農林経済学会大会シンポジウム及び日本村落研究学会大会の口頭発表と学会誌投稿によって、研究成果を公表する予定である。 現段階において明らかになっていることは次のとおりである。 (1)農村高齢者の生活問題は家族形態によって異なる。ことに、単身世帯及び夫婦世帯の場合には、経済的自立が依然として大きな問題として残る。年金の不十分さのゆえに、働かざるを得ない状況が存在している。 (2)農業従事者の高齢化は否定的に捉えるべきでなく、地域によっては定年退職者の組織的リクルート活動を行うことによって、経営体としてばかりでなく、地域農業の担い手としても成長する可能性がある。ただし、農協や行政の支援システムが重要である。 (3)ケアハウスのような比較的元気な高齢者を対象とするものであっても、農村高齢者の中には入所を厭うきらいがある。一方、在宅介護は農業労働・家事労働とともに中高年女性に集中しがちで加重負担をもたらす。そこで、施設介護と在宅介護を結ぶ地域的システムが必要である。
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