本研究の目標は、農地土壌の物理的環境の適正化と保全のための土壌管理法を確立することにある。研究の内容構成は、(1)土壌の構造的要素の改善、(2)土壌の物理的機能の適正化、(3)土壌の物理性(容水量・容気量・熱容量)の容量の制御の3主題から成る。 本年度の研究成果を以下に要約する。 (1)に関しては、バ-ク資材(林産廃棄物のバ-クすなわち樹皮と畜産廃棄物の糞尿の混合物を好気的条件下でコンポスト処理した土壌改良資材)を用いた混層耕と有材心破により根圏域土壌のMatrixおよびPorosityが比較的容易に改善できることを確認した。次の課題としては、物理性の容量制御に対応した資材量の確定があげられる。 (2)は(1)と密接に関係し、土壌の構造的要素としての間隙量・間隙組成が改善されると、保水機能・排水機能・蓄熱機能の適正な発現が図られることを、粗粒火山灰土に対するマイクロ潅漑、固結性土壌に対する浸入度、バ-ク資材ハウス耕土の蓄熱効果などから確認した。次の課題は、これらの物理的機能の相互関連性を明らかにすることである。 (3)の物理性の容量制御に関しては、バ-ク資材を用いた土層改良によりある程度の容量制御は可能であるが、作物生育の場としての土壌空間の容量制御には少なくとも作物生育に対応した時系列的な根系の解析が不可欠であることが判明した。これは土壌の物理性の容量によって根系の展開状況が変化するからであり、次の課題は物理性の容量と根系の展開状況の相互関係を明らかにすることであるが、将来的には作物分野との共同研究が必要である。
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