本研究では水稲の構造と分光反射率との関係を明確化するために、研究初年度は、分光反射メカニズムの理論考察を行った。また、研究2年度目には、東京大学農学部付属農場内(田無農場)の実験水田に栽培した登熟期の水稲について、盛夏から初秋にかけて、その水稲個体群の草冠直上からの分光反射率と水稲個体群の構造の測定を、計4回行った。また、同じ日に分光反射率測定と構造把握のための立体写真撮影を行った。その他、測定日当日は、圃場の端の平均的に生育している稲の1株を刈り取り、その部位ごとのバイオマス量(乾物重)も測定した。 測定に供した水稲品種は、キララ397、農林29号、初星、農林22号、亀の尾、コシヒカリ、日本晴れ、台中65号、水原264号、密陽23号、Lucus、Villagray、Blue Rose 2、Deltaの14品種である。品種の選定に当たっては、その背丈や葉の形状、草型の特徴を考慮して、草丈や草型が変化に富むように選択した。これらの水稲は、苗3本の25cm格子間隔の正方植えで移植し、通常量の肥料を施用し、通常の水管理状態で栽培した。その結果、背丈については、最高草丈70cm程度の水稲から130cm程度の品種までを栽培することができた。 分光反射率は、初年度新規購入したオシャンリサーチ社製のスペクトルメータを用いて、400nmから110nmまでの波長帯で約2nmの分光解像度で水稲の草冠直上や斜め方向からの分光反射率、個葉の分光反射率を測定した。撮影したステレオ写真は、解析写真測量用に現像・焼き付けした後、イメージスキャナーでデジタル画像化し、植被率・葉面積指数を算出した。 以上の水稲の個体群の分光反射率データと構造に関するデータの相関関係を分析した。個葉の分光反射率については、品種による差はほとんど認められなかったが、草冠直上の個体群からの分光反射率には、大きな差が認められた。
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