研究概要 |
本研究は平成7,8の2年間にわたって行ったものであるが、この間の調査で明らかになった点を以下に挙げる。 1.産業廃棄物最終処分場のうち、管理型と安定型の排水について調査を行った結果、管理型では排水を処理しているにもかかわらず、T-Nなど高い濃度の排水が見られた。一方水質を汚染しないはずの安定型最終処分場の場合大半の処理場ではT-N, CODなど低い排水濃度であったが。一部の安定型処分場では高濃度のT-NやCODを含む浸出水が検出された。(寺泊夏戸処分場) 2.高濃度の排水があった寺泊の処分場を対象に詳細な調査を行った。その結果、ここでは浸出水があまり希釈を受けないで水田に灌漑水として取水されているため、水稲の倒伏やいもち病の発生が多く見られたが、それは窒素過多によって起こっていることが分かった。 3.この処分場は埋め立てが完了しているが、経年的に水質濃度は減少しており、その逓減傾向は年を追って穏やかになっている。そのため、指数関数式で逓減傾向を表すことができることがわかった。 4.上記の関数式を用いて水稲に対して影響度の大きいと考えられるT-N, CODそれにEC(電気伝導度)がどの程度年数を経たら農業用水基準を満足する濃度にまで低下するのか試算を行った。その結果T-Nで20年、COD、 ECで約10年かかることがわかり、水稲に影響度が最も大きいと考えられるT-Nが水質を回復するのに最も長時間を要することがわかった。 5.浸出水の濃度は長期的には、逓減傾向を示しているが、短期的には降雨などの影響を受けて変動している。そのため、渇水年か多雨年かのよって水質濃度が異なってくる。そこで、浸出水の水量、水質が合うようなタンクモデルを考案し、適用を試み、自然渓流水との比較を行った。その結果産業廃棄物最終処分場からの浸出水は渓流水に比較して水量の変化が緩やかで渇水流量も多かったが、モデルでもそのような特徴を再現でき、水質についても良い適合度を得ることができた。
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