本研究の目的のひとつは、「Kalmanフィルタを用いた逆問題解析システム」の構築である。まず、本年度の備品費目であるX端末を設置し、現有設備であるワークステーションと接続した。このシステム上で、対象に応じて有限要素法、境界要素法、ARモデルなどを選択しながら、Kalmanフィルタとの結合解法による観測誤差を考慮した逆問題解析システムを開発した。2台ある端末により、遠隔地とのデータ送受信を想定したファイル転送や遠隔地における観測データの解析をシミュレートし、原位置観測計器からの観測データ処理と解析システムへの入力を検討した。併せて、事前情報の合理的選択や観測点配置の事前設計も解析システムに含めた。またこのシステムは解析結果の図化・印刷も高解像度で行うほか、こうした図を文書に組込むことを可能としている。 逆問題は、工学・理学のさまざまな分野で発展しており、地盤工学会、土木学会、日本機械学会では、逆問題/逆解析関係の委員会が発足している。研究代表者は、これらの委員会で幹事などを務め、上のシステムを利用して、委員会に所属する各大学、研究機関の研究者たちと情報・データの交換を活発に行った。この情報網を通じて、日本道路公団の現場における道路盛土とその基礎地盤の沈下、変形、間隙水圧など実データの供与を受け、上記システムで数値解析を実施している。この解析の結果は、今後の研究発表会における講演や学会論文集で報告していく予定である。
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