第2年度にあたる今年度は、とくに洪水時のダム管理のための流水管理手法について検討を行った。今年度の研究実績の概要を要約すると以下のとおりである。 1.研究対象流域として、岡山県北部に位置する、流域面積49Km^2の黒木ダム流域を選び、1979〜1996年の18年間におよぶ洪水流量・日平均流入量・降水量の資料を収集した。 2.この流域の洪水流出特性および長期流出特性を把握するため、上記水文資料のうち最初の2年間の資料で長短期流出両用モデルの最適同定を行った。残りの16年間の水文資料にそのモデルを適用したところ、そのモデルは洪水流量・日平均流量ともよく再現しており、この最適同定モデルは流域の水文流出応答特性を端的に表現できていることを確認した。 3.このモデルに将来の予測雨量を与えて流量を求めれば、それが洪水予測流量となる。この際、問題となるのは、(1)雨量予測をどのように行うか、(2)現時点でフィルタリングをどのように行うか、の2点である。この研究では、(1)に関しては、とりあえず現時点の雨量強度が継続するものと仮定した。 4.フィルタリング手法として、拡張カルマン・フィルター法および逆算法を適用した。その結果、(1)時々刻々の洪水流量の予測にフィルタリング手法を適用すると、洪水予測精度が格段に向上すること、(2)拡張カルマン・フィルター法よりも、逆算法の方が予測精度がやや良好であるということがわかった。 5.今後、フィルタリング手法としては、統計的線形手法も適用して、3手法の得失を検討する予定である。
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