研究概要 |
最終年度にあたる今年度は、とくに洪水時のダム管理時において洪水予測流量の精度を大きく左右する降雨予測手法について検討を行った。今年度の研究実績を要約すると以下のとおりである。 1.岡山県北部に位置する黒木ダム流域における18年間の19洪水を対象とした。流出モデルには、昨年度最適同定した長短期流出両用モデルを適用した。なお、この流出モデルは流域の水分流出特性をよく説明できることを昨年度確かめている。 2.このモデルに将来の予測雨量を与えて流量を計算すれば、それが予測流量となる。そこで、雨量予測量として(1)現時点雨量がけいぞくするとする方法、(2)過去3年間の平均雨量が継続するとする方法、(3)雨量時系列を自己回帰式で表し、その係数を時々刻々修正する方法、(4)過去3時間の雨量時系列を直線的に外挿する方法、(5)将来雨量を既知と過程する方法等の10種以上の方法を吟味した。 3.流量の予測精度から雨量予測精度を判断すると、現時点雨量が継続するものと仮定する方法が相対誤差も小さく、かつ簡便であることからとりあえずの実用的手法として使えることが分かった。 4.自己回帰式で予測する方法は、そのままでは誤差が大きくなり実用的には問題があるが、回帰係数に制約を設けると精度は幾分向上する。しかし、現時点強度継続法よりは劣る。 5.降雨時系列を直線的に外挿すうる方法は1,2時間先までは良いが、3時間先では精度が落ちる。 6.誤差評価に用いる相対誤差の分母には従来は実測流量が採用されていたが、そうすると予測流量が小さめの場合に誤差が見かけ上、小さくなるという欠点があることを指摘し、分母には実測流量と計算流量の平均値を採用する場合も吟味して、2種類の相対誤差で予測精度を議論した。
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