平成7〜9年度の3年間の研究成果の概要はつぎのとおりである。 1.まずダムの流水管理実態を把握するため、農林水産省と建設省の協力を得て全国規模のアンケート調査を行い、599ダムからの回答を得た。そのうち50km^2以上の流域面積をもつ201ダムからのアンケートをまとめると、(1)洪水予測は3時間先までが重要なこと、(2)建設省系のダムでは洪水予測に流出モデルが活用されていること、(3)洪水予測時にフィルタリング手法が用いられているのは全体の1割のも満たないこと、(4)渇水予測はほとんど行われていない現状にあることなどがわかった。 2.つぎに、洪水時の流入量予測手法を検討するため、岡山県北部に位置する黒木ダム流域を選び、1979〜1996年の18年間の洪水流量・日平均流入量・降水量の資料に長短期流出両用モデルおよびタンクモデルを適用し、両モデルが流域の長期流出・洪水流出ともよく再現することを確かめた。 3.流量予測時の状態量修正法として、拡張カルマンフィルタ法、統計的線形化法および逆算法を適用した結果、(1)フィルタリングを行うと洪水予測精度が格段に向上すること、(2)3手法とも流量予測精度はほぼ同じであること、(3)予測精度は降雨予測精度に大きく左右されることなどがわかった。 4.種々の雨量予測法を洪水予測に適用した結果、(1)現時点雨量が継続すると仮定する方法が流量予測誤差も小さく、かつ簡便であることからとりあえずの実用的手法として推奨されること、(2)自己回帰式で予測する方法は誤差が大きく実用的には問題があるが、回帰係数に制約を設けると精度は幾分向上すること、(3)降雨時系列を直線的に外挿する方法は1、2時間先までは良いが、3時間先では精度が落ちることなどがわかった。
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