ため池整備・保全計画の基本的な考え方は、ため池本体の構造的特質から長期的には周期性をもった改修が必要になることに着目し、個々のため池の改修が巡ってきた機会に、ため池と周辺環境を一体的に整備・保全することにある。そのためには、ため池本体の老朽度を事前に判定しておく必要があり、それと同時に、ため池をめぐる環境変化や周辺環境への社会的要望に対応する整備・保全方針を、予め類型化して提示しておく必要がある。本研究はそのための計画手法の体系的な確立を目的とした。研究成果報告書は、ため池の類型化手法の検討及び老朽度判定のための調査手法の検討とからなり、その構成と要約は下記の通りである。 第I章では、香川県下の受益面積2ha以上のため池を対象にして、公刊データを利用したため池の類型化手法を検討している。類型結果は大まかであるが、公刊データを用いているために客観性、一貫性があり、広域のため池を対象にする場合の類系化手法の有効性を実証した。 第II章では、香川県寒川町の全てのため池を対象にした。前章では類型化の際に、ある指標のある値の大小によってため池を区分し、この区分結果をクロスする形で類型化を行った。しかし、この区分が主観的である点、類型数は指標数に比例して多くなる問題があったので、類型化の際に主成分分析、クラスター分析を用いた。本章では市町付の自治体レベルにおけるため池の類型化手法を提示することができた。 第III章では、香川県寒川町の全てのため池を対象として、ため池の調査診断項目を明らかにし、現地調査の実施、判定対象ため池の選定、AHP法による意向調査と評価項目のウェイト値の決定、老朽度の算定、算定結果の評価と問題点を述べ、ため池を数値化した老朽度によって序列化できることを実証した。
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