研究概要 |
本研究の初年にあたる平成7年度には,以下の観点からの調査・研究を重点的に進めた。 1.平野部における地下水と農地の機能評価 愛媛県における海岸平野部を対象として,これまでに得られた地下水位・一斉流量観測データなどに基づき,地下水を含む水収支構造について調査・解析を行った。その結果,対象地域の地下水は降雨や河川からの伏流および水田からの浸透によって涵養されていることが明らかとなった。特に,地表部における一斉流量観測の結果は,灌漑期における平野部流入水のかなりの割合が地下水帯へと浸透しているのに対して,非灌漑期では流入量のほとんどが地表流出として域外へ流出してしまうことを示した。また,水収支モデルを構築して解析を行い,対象平野部では地下水涵養量の1/3〜1/4が,農業・工業・上水道用などに利用されていることが明らかにした。 2.水源地域における流出と農林地の機能評価 山林地流域および造成畑地流域を対象として,浸入モデルを組み込んだ長期間流出解析モデルを開発し,流域水循環について検討を行った。その結果,表層土壌特性や浸入能に違いが認められ,これらが出水時の流出に大きな影響を与えていることを明らかにした。また,流域の持つ雨水保留特性について解析を行い,山林地流域が造成畑地流域に比べて大きな雨水保留能を有すること,そしてそれは土壌の保水性と浸透性に支配されていることを示した。さらに,流況曲線によって流域の持つ渇水緩和機能を評価した結果,流量安定化率は15〜20%で,山林地の値は造成畑地よりもやや大きいことを明らかにした。
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