自動化・高性能化された農作業機械は、高能率と低コスト化を目指して高速度作業を行う。これら高性能システムと言えども運転者を要するばかりか、その運転者はパネルや作業のできばえを眼で見て、頭で最適操作法を判断し、その判断結果により手や足を用いて運転をせねばならない。すなわち、機械化によって運転作業は軽労作に変わったが、高速で走るシステムの一部に組み込まれて追われるように注視と判断を繰り返している。 最初は、運転者の注視点の挙動を追求して操作の頻度、ひいては精神・神経的疲労に連なる根源を明らかにする実験をした。自動車のように頭部を動かさず眼を動かす運転操作では、アイマークレコーダによる試験が有益であった。しかし、同器は視点の検出に赤外線を使っていて白日晴天下の農作業では使えないことが分かった。一方、農業機械の運転は至近距離を見ていて、視野内には注視すべき対象がほぼ一つに限られ、小型ビデオカメラで計測できることを知った。その結果、良好な作業条件下では、自動化作業機の運転者に周囲を見回すような動作が現れて心の余裕が確認されたが、不良な条件では、自動化されない場合以上に視点が集中させられ、問題点があることが分かった。 次に、農作業を請負うコントラクタの運転者は、超高性能作業機による超高速度作業を長期間にわたって行い、厳しい振動条件によって健康問題が発生しかねないことが分かった。また、平成9年から始まった大特車の軽自動車化という規正緩和は、道路走行時に新たな問題点が起こる危険性が推定される。 これらを総括し、前述の視点・振動問題と道路走行の法制度のすべてにおいて、新しい時代に応じたマンマシンシステムの研究と機構的対応が不可欠であると結論する。
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