研究概要 |
吸湿による胴割れ発生は,粒自体が吸湿速度に対してどれ程の抵抗力を持っているかによると考えた。そこで,胴割れ発生まで粒を均質な弾性体と仮定し,線膨張率εと縦弾性係数Eよりσ=Eε(g/cm^2)を,一方吸湿開始から胴割れまでの重量増加(吸湿)量wより吸湿速度Rs=w/h(g/sec)をそれぞれ求める。Rs/σ=D(cm^2/sec)は吸湿部分の水分拡散係数に相当する。ここで,σは粒水分,Rsは吸湿の推進力となる粒と周囲空気の水蒸気圧差によってそれぞれ変化するので,水蒸気圧を任意に変化させうる温・湿度を恒温恒湿器内で設定する。すなわち,粒水分と周囲空気の温・湿度がパラメータである。 2年間継続の研究計画のなかで,当年度は恒温恒湿器を購入し,CCDカメラと天びんを器内に入れて,線膨張と吸湿量を測定する準備を整えた。籾の内部を透視して胴割れの瞬間をとらえるため側方からファイバ・ハロゲン・ライトを照射したが,籾殻に吸光されて薄暗く判断しにくかった。そこで,水分を10.7,12.7,15.3,17.3%に調製した籾を脱ぷして,まず玄米で観察することにした。 恒温恒湿器内で温度を10,20,30℃,湿度を80,85,90,95%RHに組合わせて吸湿条件とした。胴割れは,水分10.7%の粒が全ての温度で95,90,85%RH,水分12.7%の粒が30℃と20℃で95%RH,水分15.3%の粒が30℃で95%RHにおいて発生した。粒水分の平衡湿度との差が大きい温・湿度ほど胴割れが短い経過時間で突発し,割れを速く拡大した。これらの観察時に線膨張はメジャー・プロセッサで計測できたが,重量増加量は測定中の天びんに器内の循環風が当り,揺動で安定せず,信頼値が得られなかった。風防処置を施して実験を再開する。 今後,籾の透光を強めて測定可能にし,胴割れしにくい品種も供試して,反覆実験を行う予定である。
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