研究概要 |
籾にフアイバスコープの光を当てて透過させ,CCDマイクロスコープのモニタに映し出すと,画像が暗すぎて胴割れの判断が困難であった。予備実験で籾と玄米の胴割れに対する抵抗性を調べたところ,さほど差のないことが分り,供試材料として玄米を使うことにした。平成7年度の科研費交付金で購入した恒温恒湿器内で,吸-脱湿量を連続測定する予定で精密天秤の使用を試みた。しかし,器内の循環風による振動を回避できず,やむなく試料を一旦取り出して,上皿天秤で手早く測定する方法をとった。また,籾水分を低い過乾燥籾に限定する計画であったが,玄米含水率(d.b%)と相対水蒸気圧との関係を表わす吸-脱湿等温線を作成する上で,高水分までの広範な測定値を必要とすることが分かり,結局12〜22%w.bの範囲で2%きざみの試料を準備した。吸-脱湿を起こさせる米粒の周囲の空気条件として,温度を10,20,30,40℃,湿度を40〜98%に変えて相互の組み合わせによる実験区を構成した。得られた結果の概要は以下のとおりである。 1.水分を12,14,16,18,20,22%に調整した試料について,粒表面の水蒸気圧に平衡する外囲の水蒸気圧の関係を実験で求め,温度ごとの吸-脱湿等温線図を作成した。 2.各水分の試料について,胴割れ発生の可能性を湿度との関係で温度ごとに作成した。 3.粒内部に発生する胴割れは外囲の温度が40℃以下では脱湿下に見られず,吸湿下で湿度の高いほど多くかつ重度であった。 4.近飽和湿度下で吸湿させた場合,試料水分が20%以上では温度40℃まで胴割れを生じなかったが,それ以下の水分では低いほど多くかつ重度であった。 5.放湿下で温度が40℃を超えると胴割れが発生しはじめ,初期水分が高いほど強かった。その際,湿度30〜50%で関係は 見られなかった。 これらの得られた結果を応用すると,胴割れ発生の範囲を明示でき,予測と防止が可能になる。
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