本研究では、農用トラクタの操作性を改善し、作業の安全性を向上させるために、音声認識によるトラクタの制御を目指す。平成9年度は、音声認識法および構築したシステムの信頼性を改善するために、以下のような研究を行った。 (1)人音声、特に搭乗者と他の音声信号を区別するために、2つのマイクロフォン入力による音源位置情報を計算するシステムを構築した。この方法は、音声がトラクタ搭乗者から発生されたかどうか判断するもので、トラクタ搭乗者の母音ピッチを利用しており、騒音の影響をほとんど受けない。 (2)騒音下において、母音性の連続ケプストラムによる異常音声検出を行うために、通常音声と異常音声の判別に用いる、ケプストラムの不連続性を調べる方法を考案し、不連続時間を調べた。その結果、通常音声を模擬した2音韻音声では、高い割合でケプストラムの不連続性を検出できることが分かった。この方法を利用することにより、抑揚のない母音性の異常音声を通常音声と区別することが可能となり、異常音性による車両停止などの技術を現実に近づけることができるようになった。 (3)トラクタエンジン騒音の下で、母音認識および単語認識によりトラクタを制御するシステムについて実験を行い、高い認識率で電装系の制御を行った。 (4)個々の研究結果を融合するために更に研究を必要とする部分もあるが、大音量のエンジン騒音下における、単語認識までの基礎的な音声認識技術は確立されたものと考えられる。
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