1.人の母音はトラクタエンジン騒音と異なり、ケフレンシ領域に継続する構造を持ち、これを利用することにより大音量の騒音下でも音声認識技術を応用できることが示された。 2.ピッチの概形により母音を認識し、車両の電装系を制御するシステムを作成し、静置したトラクタのエンジン騒音下で平均99.1%の認識率を得た。さらにトラクタを1600rmpで走行させ、ヘッドライト、および方向指示器を平均90%の認識率で制御した。 3.開発した単語認識法を用い、車両静置状態であるがエンジン騒音下でオンラインの車両制御を行い、特定話者では100%の認識率が得られ、それ以外の話者についてもそれぞれ95%の認識率が得られた。 4.母音区間評価関数を作成し、通常音声から、故意あるいは偶発的に発音される異常音声を高精度に区別することができるようになった。 5.マイクロフォンペアを用い、ピッチ音圧比を計測した結果、エンジン騒音下で搭乗者の母音音声を車外で発声された母音と区別できることが示された。 6.個々の研究結果を融合するために更に研究を必要とする部分もある。しかし本研究により、母音ピッチを応用し、大音量のエンジン騒音下でトラクタの音声制御を行う技術において、単語認識までの基礎的な技術は確立されたものと考えられる。今後はこれらの技術を融合し、総合的なシステムとして実際の車両に応用することが目標となる。さらに、認識可能な単語数を増やし、将来的には自然言語によるトラクタの制御を可能とすることが最終的な目標であると言える。
|