本研究の「培養器外直接発根法」は、従来の培養法における培養器内でのシュート伸長ステージ・発根ステージ、および培養器から取り出した後の順化ステージの時系列的な3ステージを、環境制御技術によって培養器を用いることなく光独立栄養生長条件下で同時並行的に達成しようとする方法である。 本研究では、この方法によるウィルスフリー苗の効率的生産のための好適栽培条件の探索を目的にしている。本年度は、実験材料に継代培養された培養由来のイチゴ小植物体を用い、環境制御装置を利用して、発根・生長促進のための以下の栽培条件について検討し、成果を得た。 (1)好適な培養液濃度を見つけるために、培養液濃度の異なる試験区を設け、光強度との関係で、培養液濃度が発根・生長に及ぼす影響をみた。その結果、光強度の低い場合には培養液濃度の違いによる生長差は比較的小さいのに対し、光強度の高い場合には倍養液濃度の違いによる生長差が大きくなり、培養液濃度が生長に及ぼす影響は、光強度によって異なることが分かった。 (2)栽植密度の異なる試験区を設け、栽植密度が生長に及ぼす影響を試験した。その結果、栽植密度の高い試験区ほど生長が遅く、植物が生長して葉面積指数がある値を超えると相対生長速度(RGR)が低下することが分かり、スペーシングの指標として葉面積指数が利用できると考えられた。 (3)発根促進剤(オーキシン)処理が発根・生長に及ぼす影響について試験した結果、今回の処理方法では有意な効果は見られず、さらに別の処理方法での試験が必要と考えられた。
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