いわゆるLactobacillus acidophilusグループの乳酸菌、すなわちL.acidophilus、L.crispatus、L.amylovorus、L.gallinarum、L.gasseriおよびL.johnsoniiの6菌種12菌株を用いて、固定化細胞外マトリックスタンパク質(ECM)、ヒト消化管上皮細胞様培養細胞Caco-2およびヒト消化管由来培養細胞Intestine 407への付着性を調べた。その結果、L.crispatus JCM 5810およびA269-21、L.gallinarum F41はラミニン(LAM)、フィブロネクチン(FN)、IV型コラーゲン(CIV)などECMに付着性が高かった。ECMへの付着性が高い菌株はIntestine 407への付着性も高い傾向にあった。L.acidophilus JCM 1132、L.gasseri JCM 1130およびJCM 5813はCaco-2への付着性が高かったが、ECMおよびIntestine 407への付着性はL.gasseri JCM 5813を除き、低かった。 L.crispatus JCM 5810は3種のフィブロネクチンフラグメントのうち30kDaおよび40kDaのフラグメントには付着せず、細胞結合部位を有する12kDaフラグメントにのみ付着した。L.crispatus JCM5810は固定化ECMのみならず、溶液とした^<125>I-ECMにも結合した。^<125>I-CIVへの結合は未標識CIVやI型コラーゲンにより阻害されたがやLAMおよびFNによっては阻害されなかった。L.crispatus JCM 5810の結晶性細胞表層(S-layer)タンパク質を塩酸グアニジンにより除去すると、ECMへの付着性が消失したこと、ならびにSDS-PAGEで分離後、ニトロセルロース膜に転写した43kDaS-layerタンパク質バンドに^<125>I-CIVが結合したことから、L.crispatus JCM 5810のECMへの付着性に関与する菌体表層成分を43kDaS-layerタンパク質と同定した。ECM結合性43kDaS-layerタンパク質のN-末端アミノ酸配列はDAVSSANNSNLGNVと決定された。この配列は既知のL.acidophilus ATCC 4356、L.helveticus ATCC 12046、L.brevis ATCC 8287あるいはL.reuteri NCIB 11951のどのS-layerタンパク質のアミノ酸配列とも相同性は認められず、新規なS-layerタンパク質と考えられた。
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