【目的】本研究は、肝門脈にカテーテルを装着したヒツジを供試し、門脈でのグルコース正味吸収量を求めると同時に安定同位体元素をグルコーストレーサー([U-^<13>C]-glucose)として、腸管から吸収される飼料由来のグルコース量を知ることを目的とした。 【方法】供試動物には、頸動脈、頸静脈、門脈および前腸間膜静脈カテーテルを装着したヒツジ5頭を用いた。試験区は、粗飼料区(R)と濃厚飼料区(C)とした。採血当日は門脈血流量測定の為、パラアミノ馬尿酸(PAH)溶液を前腸間膜静脈カテーテルより定速連続注入した。また、[U-^<13>C]-glucose(99atom%excess)を頸静脈カテーテルより定速連続注入した。その間、門脈および頸動脈カテーテルより経時的に同時採血した。測定項目は、門脈および頸動脈血漿PAH、グルコース、インスリンの各濃度および^<13>C-glucoseのアイソトープエンリッチメントとした。 【結果】門脈血流量は、R区、C区いずれの区においても給餌前より給餌後に有意に増加した。(P<0.05)。しかし、両区の間には差が得られなかたった。グルコースの門脈血漿濃度は、給餌後にR区で有意に減少したのに対し(P<0.05)、C区では減少は見られなかった。このときのインスリン血漿濃度は、C区の給餌後に平均で21.9μU/mlと増加する傾向が見られた。採食後6時間の門脈へのグルコース正味吸収量は、R区で-1.12に比べC区で0.42mg/min/kg^<0.75>と有意に高い値であった(P<0.05)。一方、飼料由来のグルコース吸収量は、R区;1.34、C区;0.89mg/min/kg^<0.75>であり両区の間に有意な差は得られなかった。 以上の結果により、グルコース正味吸収量はR区に比べC区の方が多くなったが、飼料由来のグルコース吸収量は両区の間に差が認められなかった。
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