研究概要 |
本研究は、飼料の栄養価値を消化管部位別消化の面から評価することを目的として、第一胃、十二指腸上部、回脹末端にカニューレを装着した去勢牛に対して、大麦を対照区として、各種食品製造副産物を配合した飼料を給与し,反芻胃・小腸・大腸ならびに全消化管での栄養成分の消化性、反芻胃内性状、反芻胃での微生物蛋白質合成量およびナイロンバックを用いたin situでの分解性について3つの試験を通して測定したものである。 1.試験1で、生米糠、加熱米糠、脱脂米糠、フスマを給与した結果、(1)米糠の脱脂処理は未脱脂米糠に比べてin situでの分解性を高めるが、反芻胃液のプロピオン酸濃度を低下させる。(2)米糠の加熱処理は生米糠に比べて、微生物蛋白質合成や栄養成分の消化性に影響を与えないが、これら未脱脂米糠は反芻胃での繊維消化を抑制し、また小腸内での脂質消化も低い。(3)全米糠給与区で澱粉を除いた非構造性炭水化物の反芻胃内消化率は30%以下であった。2.試験2で、ビ-トパルプ、サイトラスパルプ、大豆皮を給与した結果、(1)in situ分解性は大豆皮で低かった。(2)反芻胃内酢酸濃度は大麦区に比べて、各副産物区で高くなった。(3)微生物蛋白質合成量はビ-トパルプ区、サイトラスパルプ区で多くなった。(4)非構造性非澱粉分画の反芻胃内消化率は澱粉よりも低く、かつ飼料源によって変動した。3.試験3で、加熱米糠とビ-トパルプの配合割合の違う高副産物飼料を調製給与した結果、(1)米糠割合の増加によって、反芻胃でのプロピオン酸濃度が高くなり、繊維消化と微生物蛋白質合成が抑制されるだけでなく、可消化エネルギー摂取量も低下した。(2)脂肪と非構造性炭水化物の消化性は米糠割合の影響を受けなかった。4.3つの試験を総括した結果、反芻胃内での消化性と微生物蛋白質合成はin situでの飼料分解性と有意な相関関係にあり、飼料の新しい価値評価に利用できることを明らかにした。
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