研究概要 |
本年度は,主として繊毛虫とメタン細菌の関係について検討し,次のような成果を得た. 繊毛虫の見かけのメタン生成量が一日あたり一虫体あたり数ナノモルであり,数属のる繊毛虫を比較した結果Isotricha prostomaが最もメタン生成量が大きかった.そのため,メタン生成を阻害しても繊毛虫による基質の分解にはIsotricha prostomaを除いてあまり影響しなかった.培養のための繊毛虫懸濁液調整に際して,懸濁液のメタン生成活性と動物の給餌時間との関係を調べたところ,給餌後1から2時間のルーメン液から繊毛虫を調整するともっともメタン生成活性が高く,給餌後時間が経過すると活性が低下することがわかった.そのため,繊毛虫に付着するメタン菌数を計数したところ,メタン生成活性の高い時間帯で,付着メタン菌数が最大となっていた.したがって,給餌後の繊毛虫から盛んにメタンガスが放出されるのは,繊毛虫に付着するメタン細菌が多いためであるとわかった.繊毛虫に付着するメタン菌には内部共生するものと,表面に付着し,栄養条件等外部微細環境の変化によって着脱を繰り返すものと2種類あるものと推察された.そこで,ギ酸の見かけの生成量をけんとうしたところ,これも給餌時間の違いによって変化しており,内部共生菌と外部付着菌とでギ酸資化能力に違いがあり,それぞれ別の種類のメタン菌であることが示唆された.さらに,繊毛虫に付着するメタン菌とその他の遊離生活を送るメタン菌を比較するために,好塩性,アンモニア耐性の2点について検討した.その結果,これらの二つの形質に大きな差がみられたので,繊毛虫に付着するメタン菌は,遊離生活をするものと性質が異なり,おそらく属レベル以上で異なっているものと思われた.このほか,ルーメンより水素利用性の硫酸還元菌を分離し,繊毛虫と二者培養を成立させることにも成功した.
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