研究概要 |
(1)繊毛虫類と硫酸還元菌の二者培養を行った.繊毛虫との培養では,酢酸生成菌との二者培養も実施した.めん羊ルーメンから調整した混合繊毛虫に,ルーメン由来Desulfovibrio属細菌SR3株あるいは未同定酢酸生成菌Ser5株を加えて培養した結果,硫酸イオン濃度を17mMにした培地では硫酸還元により繊毛虫の生成した水素が消費され,基質の消費量も増加した.この効果は,硫酸イオン0.5mM培地では認められなかった.いっぽう酢酸生成菌は,いずれの培地でも水素を消費し酢酸を生成した.この結果,硫酸還元菌や酢酸生成菌は,条件が整えば,繊毛虫と共生できることがわかった. (2)繊毛虫に共生するメタン細菌の単離をこころみた.めん羊ルーメンより繊毛虫を調整し,ホモジナイズしたのちBalchの方法に準じてメタン菌を集積後,ロールチューブ法で単離した.得られた10菌株は,それぞれ通常の顕微鏡観察によって純粋性を確認したが,全DNAを抽出後,H.A.-Yellowアガロース電気泳動をした結果,数菌株でコンタミネーションが認められた.さらにこの電気泳動像と形態から判断して同一菌種と思われるものの重複を除くと2菌株が全く異なった菌株として完全単離された.これらは,形態的にMethanobrevibacterに類似したグラム陽性桿菌とグラム陽性連鎖球菌の2菌種であった.これらの2菌株は,いずれも古細菌の16SrDNAをターゲットとした古細菌ユニバーサルプライマーでは,まったくPCR増幅せず,報告されている古細菌(メタン菌)とはことなる16SrRNA塩基配列を持つ可能性が示唆された.従って,今後,塩基配列の解読を行う必要がある.
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