研究概要 |
牛成長ホルモン(GH)分泌促進能の高い成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)誘導体を開発するための基礎実験として、牛、ヒト、ラットのGHRHおよびそれらの基本構造を基にして合成したGHRH誘導体計7種のGH放出能を、インビトロの牛下垂体前葉細胞静置培養系を用いて検討した。牛の下垂体は17〜18ヵ月齢のホルスタイン去勢牛から屠場で採取したものを用いた。牛、ヒト、ラットのGHRHおよびそれらのGHRH誘導体を牛下垂体前葉細胞静置培養系に10^<-8>〜10^<-20>Mの範囲で作用させた。その結果、ヒトGHRH(hGRF-44)、hGRF-44のC末端のアミノ酸残基15個を除去したGHRH誘導体(hGRF-29)およびラットのGHRH(rGRF)は10^<-14>Mまで牛のGHを放出させることが分かった。また、牛のGHRH(bGRF-44)、bGRF-44のC末端のアミノ酸残基15個を除去したGHRH誘導体(bGRF-29)、bGRF-29の第2位のアラニンをD-異性体のアラニンと15位のグリシンをアラニンにそれぞれ置き換えた誘導体([D-Ala^2,Ala^<15>]-bGRF-29)およびhGRF-29の第2位のアラニンをD-異性体のアラニンに置き換えた誘導体([D-Ala^2]-hGRF-29)はhGRF-44、hGRF-29およびrGRFより牛のGH放出能が高く、それぞれ10^<-18>、10^<-17>、10^<-16>および10^<-18>MまでGHを放出させた。これらの結果から、ヒトやラットのGHRHも牛のGHを放出させることや、アミノ酸残基は44個も必要とせず、29個で十分なことが分かった。またヒトのGHRH誘導体を牛に利用する場合、第2位のAlaをD-異性体に置換すると1万倍もGH放出能が高まることも分かった。本研究の結果はインビトロでの結果であるので、今後インビボでも実験を行い、これらの知見についてさらに検討を加えたい。
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