研究概要 |
豚は、生活の基本行動として、何かを探索して報酬を得る生得的行動、即ち、鼻で穴を掘るrooting、口で噛むchewing、対象を認識する臭い嗅ぎsniffing、等を行う。しかし、標準的な豚舎、即ち、床はコンクリートなど、壁も同様という単純環境では、豚が探索し操作する対象は無く、その結果として、異常口鼻行動が出現すると推測される。 本年は、多種の床における豚の行動を観察し、特に異常な口鼻行動の出現とその対象を検討して、行動の意味を考察した。 実験Iでは、標準床、オガクズ発酵床、放牧を比較した。その結果、鼻の操作では、rooting、床こすり、他個体massagingが見られた。rootingは放牧と発酵床で、後2者は主に標準床で出現し、これらはrootingの対象が無い状況下で転嫁行動として出現した異常行動と考えられた。sniffingについては、標準床の単純な環境下で異常に増加していた。chewingとしては、摂食、食草、食土、他個体突起部くわえ、grooming,等が出現した。摂食時間は、標準床で長く、異常な口運動を含んでいると推測された。食草は放牧のみ。食土は全てで見られたが、後2者では食糞であった。他個体の突起部くわえとgroomingは標準床で多く、常同行動であった。なお、前者は受け手からの攻撃によって終わった。 実験IIでは、実験Iの結果を確認し、さらに発酵床では人為的に湿潤区も設定し、この方式では、標準床とほぼ同様な行動パターンとなることを認めた。 なお、実験I、IIとも、白血球%は、行動異常と関連していた。 以上より、異常口鼻行動は床性状の単純さに由来する転嫁行動であることを確認した。次年度は、異常口鼻行動について心理的、生理的、薬理的手法での評価を行う。
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