(飼育環境の違いによる異常口鼻行動の出現) 本年は、先ず、湿度を変えた2種の発酵床を自前で建設し、これらの豚の行動と標準的コンクリート床の行動を検討した。その結果、水分60%程度で表面温度は30℃以上の発酵床で、臭い嗅ぎ-穴掘りという豚本来の行動連鎖が発現されることを認めた。一方、標準床では、臭い嗅ぎだけが多くなり、穴掘りは出来ないため床等に対する異常な鼻操作だけが見られた。 他方、標準床では真空行動である咀嚼行動が出現した。類似の行動が発酵床でより多く見られたが、この場合、口内にオガクズを入れていた。これらの行動の頻度と増体との間には有意な正の相関があり、口操作の促進が増体を促進していることが認められた。また、リンパ球等の変化もこれを裏付けていた。 (オープンフィールドテスト) これらの豚の精神的状況を推測するため、オープンペン(無刺激環境)を準備して、豚を導入し、新奇環境に対する反応、および落下物に対する驚愕反応を調査した。その結果、標準床の豚は、新奇環境に対しても、さらには驚愕刺激に対しても、何の反応も示さず、明らかに自失の状況に近いことが認められた。一方、発酵床の豚は正常な葛藤行動(探索と逃避試行)および驚愕反応を示した。これらから、口鼻操作等の本能行動が抑制されている豚では精神的異常の状態にあることが推測された。
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