本研究は、哺乳動物初期胚における細胞内カルシウムイオンの発生支持に対する役割を追究するために計画され、最終年度である本年は単為発生誘起に関して次の成果を得た。 1)マウス卵子を用いてストロンチウムによる卵子活性化および発生支持効果について検討した。その結果、1.7mMのストロンチウムを含む培地でマウス排卵卵子を1時間培養することにより、高率に単為発生を誘起できるばかりでなく、胚盤胞および妊娠10日目の胎仔への発生を支持することを明らかにした。また、この効果はマウスの系統により異なること、および至適培養時間が存在することが明らかとなった。 2)核移植胚の発生を促すには、単為発生刺激の付加が不可欠である。そこで、ウシ核移植卵子における電気刺激の付加が胚の発生に与える影響を検討した。その結果、単為発生誘起刺激として直流電気パルスを反復すると、活性化率のみならず核移植胚の発生能が改善されることが明らかとなった。さらに、活性化刺激に加え、電気刺激を追加して与えると、発生能が向上することを示した。 これらのことから、細胞内カルシウムイオン濃度を人為的に調節することにより胚の発生を改善できる可能性を示した。
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