本研究は、哺乳動物初期胚における細胞内カルシウムイオンの発生支持に対する役割を追究するために平成7年度より平成9年度までの3年間実施された。この間得られた結果を要約すると、以下の通りである。 1)マウス排卵卵子を体外受精し、受精後のカルシウムイオンの変動を詳細に調べた結果、受精により生じたカルシウムイオンのオッシレーションは、前核が形成される時期、すなわち受精後4-5時間目に消失することが明らかとなった。さらに、前核にはおそらく精子由来のカルシウム放出活性が局在していることを突き止めた。 2)ストロンチウムによる卵子活性化および発生支持効果について検討した。その結果、ストロンチウムを含む培地で排卵卵子を培養することにより、高率に単為発生を誘起できるばかりでなく、胚盤胞および妊娠10日目の胎仔への発生を支持することを明らかにした。 3)核移植胚における電気刺激の付加が、胚の発生に与える影響を、ウシ卵子において検討した。その結果、単為発生誘起に直流電気パルスを反復すると、活性化率のみならず、核移植胚の発生能が改善されることが、明らかとなった。さらに、活性化刺激に加え、電気刺激を追加すると、発生能が向上することをしめした。 これらのことから、細胞内カルシウムイオン濃度を人為的に調節することにより胚の発生を改善できる可能性が示された。
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