研究概要 |
ラットでは帯状皮質の一部である膨大後野からの皮質皮質投射の詳細を明らかにした.膨大後野は大きく膨大後の内への連合性投射および交連性投射,前帯状野・前頭野への投射,視覚野への投射,海馬後野への投射があることがわかった.膨大後野内へ連合性および交連性の投射は起始細胞の近傍には強い投射があるが,起始細胞から離れるにつれ投射は弱くなる.また,膨大後野を構成する顆粒性膨大後野と無顆粒性膨大後野の間には強い相互結合がある.膨大後野から前帯状野への主要な投射は,顆粒性膨大後野尾側部から起こり前帯状野尾側部へ投射するものと,無顆粒性膨大後野から起こり前帯状野尾側部と前頭2野尾側部に終わるものからなることを明らかにした.視覚野への投射は,主として無顆粒性膨大後野から起こり,18野に同側性に投射する.また,膨大後野から海馬後野への投射は,顆粒性膨大後野が前海馬台,旁海馬台,海馬台,嗅内野に,無顆粒性膨大後野は旁海馬台,嗅内野,嗅旁野へ主として同側優位に投射することがわかった. ウサギでは,29d野吻側部が29d野吻側部内および24野尾側部に同側優位に投射し,18野と前海馬台内層に同側性に投射することを明らかにした. 以上の結果,帯状皮質の一部である膨大後野のうち顆粒性膨大後野は主として海馬後野のような辺縁皮質との結合関係が強いのに対し,無顆粒性膨大後野は視覚野のような感覚野と前帯状野あるいは前頭野のような辺縁皮質以外の領域との結合関係が強い.これらの結果は,膨大後野の出力には,主として顆粒性膨大後野→無顆粒性膨大後野→前帯状野・前頭野という最終的な運動に結びつく情報の流れと,無顆粒性膨大後野→感覚野あるいは海馬後野というフィードバックの情報の流れがあるものと考えられる.
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