今年度は二つの血管病態モデルを作成し、各血管の構造と機能変化を検討した。 一つは、ウサギ頸動脈内をバルーンカテーテルで擦過し、6週後に動脈を摘出したもので、光顕的には内膜側に新たな平滑筋細胞の増殖が認められた。そしてノルエピネフリン、プロスタグラジンF2αに対する収縮反応の増強が認められた。もう一つは、ラットにモノクロタリンを50-70mg/kg皮下注射し、3-5週後に肺動脈を摘出した。この病態では中膜の肥厚が認められた。現在、それぞれの病態血管の機能以上にどのプロテインキナーゼが関与するかを検討しているが、内膜肥厚モデルでは収縮反応の亢進が認められ、その亢進を非選択的プロテインキナーゼ阻害薬が抑制したことから、プロテインキナーゼCあるいはチロシン・キナーゼの関与が疑われた。このモデルではアゴニストによる細胞内Ca^<2+>濃度増加は対照と変わらなかったため、ミオシン軽鎖リン酸化のCa^<2+>感受性が増加したか、アクチン側での制御蛋白の変化が考えられ、次年度に検討する予定となっている。また、中膜肥厚モデルではチロシン・キナーゼの関与はないらしいという結果を得ている。 以上の検討と合わせて、プロテインキナーゼ阻害薬の選択性を検討し、強力なキナーゼ阻害薬スタウロスポリンは血管平滑筋では主にプロテインキナーゼCを阻害して血管収縮を抑制することを見いだした。
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