研究課題/領域番号 |
07660404
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
伊藤 勝昭 宮崎大学, 農学部, 教授 (70136795)
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研究分担者 |
中井 雅晶 宮崎大学, 農学部, 助手 (00217647)
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キーワード | 肥厚血管 / 血管内皮傷害 / チロシン・キナーゼ / プロテイン・キナーゼC / 細胞カルシウム動員 / カルシウム感受性 / 高血圧血管 |
研究概要 |
本研究では二つの方法で血管病態モデルを実験的に作成し、それぞれの形態的、機能的変化を調べ、その機能変化に蛋白キナーゼがどう関与するかを検討した。まず一つは、ウサギ頚動脈にバルーンカテーテルを挿入し、頚動脈内皮を擦過して剥離する手術を施し、その6週後に頚動脈を摘出して実験を行った。内皮擦過頚動脈は顕著な内膜肥厚が認められた。その血管ではノルエピネフリンに対する収縮反応は正常血管と差がなかったが、プロスタグランジンF2α(PGF2α)に対する反応は増加していた。セリン・スレオニンキナーゼ阻害薬は内膜肥厚血管でノルエピネフリン、PGF2αによる収縮に対しより強い抑制効果を示した(論文に発表)。チロシンキナーゼ阻害薬も収縮を抑制したが、その効果は肥厚血管で特に強いわけではなく、チロシンキナーゼは肥厚形成には関与するが、収縮性の変化には直接の影響はしない可能性が示唆された。もう一つの実験は、ラットにモノクロタリンを皮下注射して肺動脈内皮障害による肺高血圧を作成し、その肺動脈の性質を調べた。肺高血圧が確立したモノクロタリン投与3週目に肺動脈は顕著な中膜肥厚を呈し、内皮は存在しているにもかかわらず、内皮による弛緩機能は著しく障害されていた。この肺動脈は収縮刺激がないときでも収縮した状態にあり、それは細胞膜が脱分極し、静止時の細胞質Ca^<2+>濃度が上昇しているためであり、その原因として内皮による血管調節機能の低下が考えられた。収縮薬に対する反応は時期によって亢進、あるいは逆に低下が認められたが、これらの変化にチロシンキナーゼが関与する可能性は薄いものと考えられた。これらの成果については投稿論文を準備中である。 これらの研究に先立ってセリン・スレオニンキナーゼ、チロシン・キナーゼを阻害するstaurosporineの血管平滑筋の細胞質Ca^<2+>動員、収縮に対する作用態度を検討し、staurosporineはプロテインキナーゼCに依存した収縮を細胞質Ca^<2+>濃度変化と無関係に抑制することを明らかにした(論文に発表)。
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