標記テーマに基づき二年間にわたった研究成果の概要は次のようである。まず、ラット近位結腸縦走筋での非アドレナリン・非コリン性の抑制性伝達について、一酸化窒素が役割を果たしていることを次の結果から確認した。経壁電気刺激(EFS)やDimthylphenylpiperazinium(DMPP)により一過性の弛緩が生じた。この弛緩はアトロピン・グアネチジン存在下にも確認され、テトロドトキシンで消失する。また一酸化窒素合成阻害薬のN^G・nitro-L-arginine(L-NOARG)によって抑制され、その後のL-Arginine添加により回復した。このように、一酸化窒素によりメディエイトされている弛緩に伴って、組織内のサイクリックGMP(cGMP)含量が増加した。一方、cGMPの合成酵素であるグアニレイト・シクラーゼを抑制するLY83583やメチレンブルーにより、組織内のcGMP含量はresting level以下に抑制されたが、EFSやDMPPによる弛緩反応は全く影響を受けなかった。またcGMPにより活性化されるcGMP依存性プロテインキナーゼの阻害薬であるRp-8 bromo cyclic GMPSによっても全く影響を受けなかった。従ってラット近位結腸縦走筋では、一酸化窒素が組織内cGMPとは無関係に弛緩を生じていることが強く示唆された。遠位結腸縦走筋では弛緩反応への一酸化窒素の関与は全くみられず、VIPとPACAPがK^+チャネルの開口を介して働いていることが認められた。また、直腸輪走筋でも一酸化窒素がcGMPとは無関係に弛緩を起こしていること、そして縦走筋では関与していないことも併せて認めた。
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