研究概要 |
Sox17, t-Sox17に対する抗体を用いた各Sox17 mRNA isoformの産物の同定とその細胞内局在の差異 Sox17とt-Sox17 mRNA isoformの産物を検討するため、Sox17蛋白のN端、HMG box、C端領域に対する3種類のペプチド抗体、抗recombinant Sox17抗体 (兎ポリクロ)を各々作成し、western blot解析、免疫組織化学的解析を行った。その結果、Sox17およびt-Sox17 mRNA isoformとも推定されるORFに従って翻訳されることが明かとなった。また、免疫組織化学的解析の結果、t-Sox17も、Sox17同様、核に存在することが明らかとなり、両isoformとも、遺伝子の発現調節に関与している可能性が推測された。 Sox, t-Sox17のDNA結合能、転写活性化能の解析 減数分裂前後におけるSox17からt-Sox17 formへの変換における機能的意義を明らかにすることを目的とし、両isoformのGST融合蛋白を作成し、SELEX法, EMSA法によりDNA結合能について検討した。その結果、Sox17において、SRYや他のSox蛋白同様、AACAAT配列に高い親和性を示した。一方、t-Sox17は、SELEX法による結合配列の濃縮が認められず、少なくとも配列特異的DNA結合能が欠損していることが確認された。また、4コピーのSox17結合配列をSV40 promoter-luciferase遺伝子の上流に挿入し、pCDM8/Sox17, pCDM8/t-Sox17やそのdelition-mutant constructsとともに、L929またはHela cellsに導入し、転写活性化能を検討した。その結果、Sox17蛋白は、その結合配列を介してluciferaseの発現を誘導することが明らかとなり、C末のSerに富む領域が転写活性化に必須のドメインであることが明らかとなった。 以上の結果から、Sox17は、精細胞の初期において転写因子として下流遺伝子の発現を調節することにより機能し、減数分裂後、alternative splicingにより転写活性化領域を有するがDNA結合能を欠いたt-Sox17 formへ変換され、Sox17と異なった役割を担っていることが推測される。
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