研究概要 |
細菌毒素の中で催吐活性を有す代表的なものとしては、ブドウ球菌エンテロトキシンとセレウス菌嘔吐毒がある。本研究では、ブドウ球菌エンテロトキシンの構造、免疫学的および生物学的活性(IFN-γ産生誘導活性等)部位について検討する。また、セレウス菌嘔吐毒の精製を行ない、本態を明らかにすると同時に、生物活性(催吐活性、ブドウ球菌エンテロトキシンの持つ生物活性)を解明することを目的とした。その結果、以下に示す成果が得られた。 1.ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)分子上の抗原決定部位の同定 SEA分子のアミノ酸配列のN末端側から20残基を含むペプチド13種類を合成し、さらにウサギ抗ペプチド抗体を作製し、合成ペプチドと抗SEA抗体、および抗ペプチド抗体とSEAとの反応性を調べた。その結果、SEA分子上には免疫原性を有する少なくとも3の異なるエピトープが存在することが示唆された。 2.ブドウ球菌エンテロトキシン分子上のIFN-γ産生誘導活性部位 合成ペプチドおよび各抗ペプチド血清を用いて、SEA分子上のIFN-γ産生誘導活性部位を解析した。その結果、SEAのIFN-γ産生誘導活性部位はN末端から161〜180個のアミノ酸配列を示す部位であることを明らかにすることができた。 3.セレウス菌の産生するHEp-2細胞空胞化変性物質の精製と催吐活性 空胞化変性物質は有機溶媒による抽出、シリカゲルクロマトグラフィーおよびHPLCにより精製することができた。精製標品はスンクスの経口投与(3.400U)および腹腔内投与(1,200〜2,000U)により嘔吐活性を示した。さらに、腹腔内投与(1,200U)では致死活性を示した。他方、マウスに対する致死活性は尾静脈内(710U)および腹腔内(930U)投与により致死を示した。以上の成績により、空胞化変性物質は嘔吐毒と同一で安定な物質であることが確認された。
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