研究概要 |
myc遺伝子と協同して作用する遺伝子の検索においては、猫のリンパ腫11例を用い、サザンブロット解析により、4種の癌遺伝子の再構成を検討した。その結果、c-mycの再構成が11例中5例に認められた。11例中、bmi-1の異常は1例、pim-1の異常は1例、fit-1の異常は2例に認められた。bmi-1、pim-1およびfit-1に異常が認められた症例では、いずれもmycの異常を伴っていた。このように、FeLVによるリンパ腫において複数の癌遺伝子に異常が認められ、またそれらが相互に関連することが示された。 細胞周期の調節に関与するp53遺伝子の変異を、犬の自然発生腫瘍16例について解析した。その結果、悪性リンパ腫の1例、単球性白血病の1例、骨肉腫の1例および、大腸癌の1例においてp53遺伝子のアミノ酸を変化させる変異が検出された。これらの変異はいずれもp53の中心的な機能であるDNAの結合に関与する領域に存在し、p53の機能の不活化が予想された。 染色体解析による癌関連遺伝子の検索を行うため、染色体相互転座に関与する免疫グロブリン(Ig)遺伝子およびT細胞レセプター(TCR)遺伝子のクローニングおよび染色体マッピングを行った。ネコのIgHCμ,IgHCγ,TCRCα,TCRCγ,TCRCδの各遺伝子は、ヒトのこれら各遺伝子とそれぞれ60.3%,63.5%,53.2%,54.2%,65.2%,63.3%の相同性を示した。hybrid cell pannelのDNAを用いて染色体マッピングを行ったところ、IgHはB3,IgLkはA3,IgLλはD3,TCRαはB3,TCRβはA2,TCRγはA2,TCRδはB3の猫の各染色体に存在することが明らかとなった。
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