研究概要 |
動物に病原性を示すS. hyicusとS. intermediusは健康な動物にも広く分布するため、これらの感染症の疫学解析には病原株と非病原株の識別が必要である。本研究は、パルスフィード電気泳動法(PFEG)によるDNA解析が2菌種の病原株と非病原株の識別に応用できるか否かを検討した。はじめにPFGEの最適条件を設定し、各種動物由来S. hyicusについて解析を行ったことろ,由来動物種によって特異的なパターンがみられ、本菌種におけるecovarの存在が示唆された。S. hyicusでは豚の感染症が最重要であるが、豚由来病原株は90%が特定のパターンを示し、比較的多型性の非病原株との識別は可能であった。しかし、病原性を規定する遺伝子断片を特定することはできなかった。また、病原株のパターンは一部非病原株でもみられ、発病要因は菌側のみではなく宿主側にも存在することが示唆された。菌体外発現タンパクの解析を行ったところ病原株では特定のタンパクの発現量が著明であり、非病原株のそれは検出率も低く発現量は少なかった。本タンパクの同定、構造遺伝子ならびに調節機構が新たに課題となった。 一方、S. intermediusでは菌種内において病原株、非病原株とも遺伝子型がきわめて多様であり、PFGEによる病原株の識別は困難であった。本菌種が遺伝的にheterogeneousであることが初めて明らかとなった。 マウス感染モデル系を用いた両菌種の病原性解析では病原株と非病原株の識別は困難であった。この結果は両菌種感染症の発病機構における宿主側の重要性を強く提示することとなった。 以上の結果からPFGEによるDNA解析は両菌種特にS. hyicusの生態、疫学マーカーとして有用であることが明らかとなり、PFGEレベルにおける病原性解析は本研究をもって十分と結論される。
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