腸内フローラは侵入してきた病原性細菌を競合的に排除する能力を持っていることが知られているが、そのメカニズムには不透明な点が多い。従って、鶏からサルモネラを排除する目的で飼料添加用生菌剤がすでに市販されているが、その製法は経験的なデータに基いている。今回、腸内フローラのサルモネラ競合的排除メカニズムを解明するため、とくに接着性について実験を行い次の成績を得た。 1.成鶏の盲腸内容から非病原性で接着力の強い菌株を採取するため、嫌気性流動培養装置を用いて分離を行い、乳酸菌、大腸菌、ビヒズス菌を含む接着力の強い細菌セットを作成した。走査型電子顕微鏡による観察で、培養装置のガラス面に菌が着く様子は腸管粘膜表面に接着する様子によく一致した。 2.細菌セットを嫌気性流動培養装置内に定着させたところ、その後接種したSalmonella Typhimurium(ST)の定着が抑制された。一方、ST接種後に細菌セットを追加した場合にはSTの菌数は減少しなかった。 3.細菌セットを予めヒナに投与した後、STを投与した。盲腸内ST菌数は細菌セット投与群で低くなった。 4.多くのサルモネラの菌株がマンノース感受性の接着性を示すので、表面がマンノース残基で覆われているイ-ストはサルモネラを凝集しながら排除すると考えられる。流動培養装置を用いた試験で、イ-ストがSTの菌数を減少させたので、乾燥イ-ストを添加した飼料を与えたヒナに細菌セットを投与し、ST感染試験を実施した。乾燥イ-ストは細菌セットのST排除能を助長した。
|