研究課題/領域番号 |
07660424
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山手 丈至 大阪府立大学, 農学部, 講師 (50150115)
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研究分担者 |
田島 朋子 大阪府立大学, 農学部, 助手 (90173145)
木曽 康郎 大阪府立大学, 農学部, 講師 (10142374)
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キーワード | 悪性線維性組織球腫 / 組織球 / 筋線維芽細胞 / 間葉系始祖細胞 / 多分化能 / ラット実験モデル |
研究概要 |
悪性線維性組織球腫(MFH)の組織発生は未だ明らかにされていない。近年、MFHには多方向に分化する間葉系細胞の始祖細胞が存在することが推測されている。そこで、本研究課題においては、MFH細胞の多分化能を明らかにするために、ラットMFH由来クローン細胞(MT-8;未熟な間葉系細胞、MT-9;組織球と線維芽細胞の双方の特性を有する細胞)及びシスプラチン(抗癌剤)耐性細胞の特性を多角的に解析し、以下の成果を得た。 1.組織球への分化:In vitroで、MT-8及びMT-9細胞にマクロファージ分化因子であるリポポリサッカライドあるいはラットの高脂血清を添加すると、リソソーム関連酵素(酸フォスファターゼ、非特異的エステラーゼ)及びラットマクロファージ特異抗体(ED-1,ED-2)に対する陽性細胞が増加し、組織球へ分化する可能性が示唆された。しかし、ヒトのMFHの起源細胞は単核食細胞系(MPS)由来しないと考えられており、MT-8とMT-9細胞とMPS系細胞との係わりはさらに追及する必要がある。 2.筋線維芽細胞への分化:MT-9細胞にはα-平滑筋アクチン(SMA)陽性の筋線維芽細胞が20%程度混在する。そこで、病的線維化において線維芽細胞から筋線維芽細胞への変異を導く因子として近年注目されているサイトカインであるTGF-βを添加し、SMA陽性細胞の出現を観察したが、TGF-β添加によりSMA陽性細胞の増加は認められなかった。筋線維芽細胞への分化に関わる因子についてはさらに検討する必要がある。 3.シスプラチン耐性細胞の多分化能の証明:シスプラチンの低濃度から高濃度へと細胞を接種して得たMT-R9細胞は、in vitroでは組織球の性格を増強し、その同系ラットでの誘発腫瘍は、多彩な組織像を現した。すなわち、その腫瘍には、筋線維芽細胞及び顆粒細胞の腫瘍性増殖部位、並びに骨肉腫様部位や脂肪芽細胞の混在部位が頻繁に観察された。MFH構成細胞の多分化能の可能性がin vivoの実験系で初めて確認された。抗癌剤の処理によりラットMFH細胞の表現系が著しく変化したことは、予期せぬ結果であり、多彩な組織像を示すヒトMFHの組織発生を考える上で大変興味深い所見を呈示した。 4.上述のようにMFH細胞の多分化能の可能性は、今年度の実験で確認出来たが、この変化は現象として捉えたに過ぎず、その細胞変異に係わる因子の究明は将来の研究課題として残る。今後は、種々の細胞増殖因子の関与、並びに遺伝子レベルでの細胞変異の原因を追及する予定である。
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