研究概要 |
I.ウシ白血球粘着不全症(BLAD)牛の病態解析 (1)BLAD牛における下顎骨のX-線学ならびにリンパ節の免疫組織学的検討。 BLAD牛2頭につき、下顎骨のX-線ならびに体表リンパ節の免疫組織学的解析を加えた。BLAD罹患牛の白血球機能不全に伴う下顎部病巣部は,重度の骨吸収,骨融解,を呈し重度の歯周囲炎をX-線学的に証明した。抗CD18抗体を用いたリンパ節の免疫染色により,BLAD牛のリンパ節はCD18陽性細胞は存在しなかったが,正常牛のそれはCD18陽性細胞の存在を明らかに認めた。これらの特徴的な所見は,生体防御において白血球の付着に依存した機能の重要性を支持する。 (2)BLAD牛における単球のFcリセプター発現,細胞内情報伝達およびその機能解析。 BLAD牛の単球のFcリセプターは正常牛のそれに比較して,1.8倍増加していることを見い出し,細胞の刺激に伴う細胞内Ca^<2+>濃度は,CR3を介するCa^<2+>濃度の低下を認めたが,Feを介するそれは,正常のそれらより増高していたるまた化学発光能も,ほぼ細胞内Ca^<2+>濃度の動きと関連していた。ESR-スピン解析も特徴的なパターンを認めた。 II.我国におけるBLAD-遺伝子の分布に関する研究 北海道,東北,関東,中国,九州から20牛群796頭のホルスタイン種泌乳牛を対象に血液を採取し,BLAD遺伝子をDNA-PCR法で検索した。BLAD-キャリャ-率は,0〜23.5%,平均8.1%(SD5.8,70/796頭)であった。BLAD発症牛群のキャリャ-率は,2.6〜23.5%,平均10.8%で,BLAD陰性牛群の0〜12.5%,平均5.4%に比較して有意に高値であった。対象泌乳牛のBLAD遺伝子頻度は0.040であり、雄牛の頻度0.054から,BLAD発症率は0.03〜1.2%と推定された。
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