研究概要 |
I.ウシ白血球粘着不全症牛(BLAD)の病態 (1)細胞外マトリックス(コラーゲンI,N,フィブロネクチン,ラミニン)に対するウシ正常好中球およびCD18(BLAD)欠損好中球の付着性を比較検討した。CD18欠損好中球のコラーゲンI,IVフィブロネクチンに対する付着性は有意に低下したが,ラミニンに対しては,正常好中球のそれと同等であった。細胞外マトリックスに対する好中球の付着性においても,β_2-インデグリンの存在の重要性が確認された。 (2)正常牛およびBLAD牛の白血球におけるDC11/CD18の合成能,細胞内[Ca^<2+>]^i情報伝達,化学発光能および膜流動性を比較検討した。正常好中球ではCD11/CD18の合成を認めたが,BLAD牛のそれは陰性であった。補体および熱凝集IgG-刺激での細胞内[Ca^<2+>]^i反応において,第一相の[Ca^<2+>]^iは認められたが,第二相は欠損もしくは有意に低値を示し特徴的なパターンを確認した。膜流動性には,両者間に差を認めなかった。 II.BLAD関連遺伝子の分布と発症率の推定 我国の6地方20牛群から796頭の乳牛を対象に,DNA-PCR法を用いて,BLAD,BLAD-キャリャ-,正常の3群に診断した。BLAD-キャリャ-は796頭中70頭で,牛群では0〜23.5%に分布していた。BLADの発症を認めた牛群では発症(-)牛群に比し,有意に高値であった。種雄牛のBLAD-キャリャ-率は,846頭中91頭で,10.8%であった。両群の遺伝子頻度は,各々0.044,0.058であり,遺伝統御が加えられない場合,BLADは0.16%発生することが推定された。
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