研究概要 |
TUM系雄5〜12週齢のスナネズミ52匹にコレステロール0.5%または1%と,コール酸0.2%,オリーブ油5%を添加した固形飼料を25週連日自由摂取させたところ,投与開始翌週からスナネズミの体重は上昇し,8〜9週をピークに減少し,15週からは死亡例も多くみられた。一方,肝重量は増加しコントロールの3〜4倍にまで腫大した。血清コレステロール値は投与開始後1週から顕著に増加し,1000mg/dl以上の例も多く,最高2100mg/dlを示した。 組織学的所見では投与2週齢で肝にコレステロールエステル蓄積が認められ,投与8〜10週では高度の脂肪肝となった。またグリソン鞘および中心静脈周囲,一部小葉内に軽度の好細網線維の増生がみられた。同時期に電顕像では,広い細胞質に大型の脂肪空胞を有し,リン脂質および粗面小胞体に富んだ伊東細胞を認めた。投与13〜15週では細胞質を富有するやや異型の肝細胞の結節状増殖巣がみられ,核は増殖細胞核抗原(PCNA)陽性を示した。さらに膠原線維や好銀細網線維の密な増生を伴い,伊東細胞の脂肪空胞は消失し,微細線維放出像を認めた。投与10〜20週では,PCNA強陽性を示す異型肝細胞増殖巣が大型化して偽小葉が形成された。電顕像では細線維の増加とともにしばしば伊東細胞集合像を認めた。生存限界の投与25週では偽小葉はさらに明瞭となった。 以上の所見から,コレステロール投与スナネズミでは,脂肪肝から肝硬変に至る経過で増生した伊東細胞の機能が,線維芽細胞と同様のコラーゲン線維合成能へと変化して,肝硬変の進展に寄与することが示唆された。
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